case09

地域包括支援センターに勤めるK.Tさん

今回のお話は、K.Tさん(仮名)です。地域包括支援センターにお勤めです。これまでの介護職としてのご経験と、直接的な介助を行う現場から離れてから感じることについて、お伺いしました。
※インタビューに応じてくださった方に関する個人情報保護の観点から、お名前は仮名とし、職場に関する役職名その他委員会等の名称を実際の名称から一般的な名称に変更しています。具体的なエピソードについても、趣旨を損なわない範囲で編集をしています。

―現在地域包括支援センターにお勤めとのことですが、これまでにどのような介護・福祉領域のお仕事をご経験されてきましたか?

 最初の仕事は特養でした。介護職員として。それまでは全く関係ない仕事に就いていたのですが、退職して初任者研修の資格を取ってから特養に行ったんです。しばらくしてショートステイに異動しています。その間に介護福祉士とケアマネの資格を取りました。
 ケアマネの資格を取ってからは、同じ法人の居宅介護支援事業所に異動して、ケアマネとしてのキャリアをスタートさせました。
 ただ、一年と少ししたところで居宅のケアマネ配置数を減らすことになってしまって、特養の介護職員に戻らないかと言われてしまって…ケアマネとして頑張っていきたかったので、そこの法人は退職することにしました。
 再就職の道を探す中で、現在の地域包括にご縁があって、この春入職しました。

―現在の職場にお勤めを始めて、まだ間もないのですね。これまでのご経験から、すぐに慣れましたか?それとも、まだ慣れずご苦労が多いですか?

 直近で約一年半、居宅ケアマネジャーとして働いていたのでケアマネジメントプロセスについては問題ありませんでした。
 ただ要介護の方のみを持っていた為、要支援の方の予防ケアプランの作成経験が無く、最初はとまどいがありました。作ってみると私にとっては、要介護のケアプランより作りやすく感じました。現在はある程度の時間で仕上げられています。
 また、基本チェックリスト、興味関心シートの存在を知り、アセスメントの質としては前職の時より成長出来ている実感があります。
 もちろん予防のケアプラン作成だけではありません。包括相談員として、介護保険以外の相談、困りごとに対応しています。この点についてはまだまだ経験が浅い為、三職種の先輩方に聞きながら、今出来ることを行っています。

―これまでのご経験が活きていると感じるのはどんなところですか?

 短いものの居宅ケアマネジャーとしての経験が非常に活きています。さらに特養、短期入所の介護職員としての経験も、ケアマネジメントを進める上での基礎として活きていると思います。
 また総合相談という面では、介護業界に携わる前の一般企業での勤務経験が今後、活きてくると感じています。ちなみに20代〜30代前半はアミューズメント施設の企画運営、印刷会社でのDTPデザイナーとしての社会人経験があります。包括の相談員としての経歴としては変わり種になるかもしれません。

―これからが楽しみですね。次は、ケアマネとして働き始めた頃のお気持ちをお聞かせください。介護職員として働いていた時のケアマネに対するイメージと、実際にケアマネとして働き始めてからの仕事内容に対する実感は、何か違いがありましたか?

 実務に就く前のイメージと大きく違いは感じませんでした。介護業界全体に言えることですが、やはり女性ケアマネの方が多く、40〜50代が多いように感じました。介護職員はチームで働く形ですが、ケアマネは一人で仕事を進める部分が多いです。四名の居宅でケアマネになりましたが、私以外は全員女性。件数もほぼMAXで持っていて、じっくり教えてもらえる環境ではありませんでした。ある程度相談には乗ってもらえるものの、最後は自分で責任を持ってケアマネジメントを進めざるをえないという面は、新人には少し重い面も感じました。全てに100点満点の仕事を目指すと、潰れるかもしれません。今も正解が無い仕事で、どこまで出来れば一人前なのかという想いはあります。

―ケアマネとして働き始めてから、介護職として働く方々への印象や、その仕事内容に対する思いは何か変わりがありましたか?

 介護職員時代は、特養で介護度も高く、二人介助で抱えて移乗。一人介助でも車椅子に支えて移乗と体力勝負でした。食事、入浴、排泄、夜勤対応、看取りと約6年半、施設の現場で働いてきたので、大変さはある程度理解出来ると思っています。ケアマネになった今も、各サービス事業所で働く方々に尊敬の念と仲間意識を持っているつもりです。

―介護・福祉の領域でお勤めを始める前のお仕事は随分と分野の離れたもののように思います。介護の仕事を始めたときに感じたことを思い出せる範囲で教えてください。

 体力的にも精神的にも大変な仕事だと感じました。また、職員間での意識やコミュニケーション能力の違いから、人間関係の問題もありました。どの仕事でもある問題ですが、介護現場での人間関係は、仕事の質に直結してしまうので、感情的になりやすい方は難しいのではないかと感じます。私個人としては喜怒哀楽の怒がほぼ表に出ない?為、元々向いていたかもしれません。

―日々、同僚と共同で目の前の利用者を支援する施設介護では、同僚の人間関係と仕事としてのチームワークはなかなか切り離せないですね…。一方で、「一人で仕事を進める部分が多い」ケアマネの仕事について、「職場」の人間関係は、どれくらい影響するとお感じでしょうか?

 実際に仕事を進める部分では、一人で対応しますが、ケアプランやサービス、対応について相談できる同僚、先輩、上司がいるかどうか、また意見を言い合える関係であるかはケアマネジメントの質に大きく影響すると思います。特に私のようにキャリア数年の新人ケアマネにとっては、職場での人間関係は成長の度合いが変わってくると思います。

―包括でのお仕事で、「三職種の先輩方に聞きながら」とのお答えがありました。K.Tさんにとって、仕事の疑問を「聞きやすい」職場だと感じますか?

 三職種が全員女性、かなり個性的な面々ですが、仕事の疑問も聞きやすく、何でも話せる雰囲気です。たまたま居宅ケアマネ時代も4人居宅で男1人でしたが、今の方がそれぞれの職種の視点を聞けて勉強になります。ただどうしても主任ケアマネから教わる形が多くはなります。

―地域包括のお仕事では、日々たくさんの関係者(行政、事業者、当事者、家族など)とやり取りをされているのではと思います。多い日では、何名くらいの方とやり取りをされますか?ざっくりと「これくらいかな?」という印象程度でけっこうです。

 訪問、来所、電話等合わせれば10名以上の日があります。

―この日は忙しかったなあ、という日を振り返っていただいて、大まかな一日の流れを教えていただけますか?

 そうですね…午前中にアセスメント、契約で2件訪問。午後にはデイ見学の同行をして、合間で予防ケアプラン作成を3名分。さらにそのそれぞれの合間に、一週間以内でサービス担当者会議のスケジュール調整を関係各所に伺って3件分確定をした、という日があったのですが、忙しかったです。

―訪問などは、その前後に準備や記録作成などがあるのでしょうし、大変そうですね。予定の前後の作業時間も含めてのスケジューリングは、難しく感じますか?

 準備については決まった書類を揃えるのと何からどう話を聞くかイメージトレーニングする形です。それぞれ実施した後、記録を入れます。どちらも30分から1時間程度で行うようにしています。

―介護職員として働いていらっしゃったときに、気持ちが上向くようなことはなんでしたか?

 利用者さんからの笑顔や感謝の言葉が一番嬉しいです。また一緒に働く職員と連携して、業務が円滑に進み、お互い気持ち良く働けることも楽しい面になります。直接援助のチームケアは、助け合いの精神が無いと結構きつくなります。

―ケアマネとして働きはじめてから、気持ちが上向くようなことはなんでしたか?

 やはり利用者さん、またその家族から笑顔や感謝の言葉を頂けることが一番の幸せです。これまでの生活歴を利用者さんから聞くのも楽しいです。あいづちを打ちながら、更に気持ち良く話をして頂けるとこちらも楽しく、やりがいを感じます。

インタビューはここまでです。実はこれ、メールでのインタビューだったんです。複数回のやりとりをまとめたものですが、どの質問にも的確にわかりやすくお答えいただいて、普段のお仕事ぶりが垣間見えるようでした。ご協力ありがとうございました。