case10
デイサービスと訪問介護を兼務するとん太ママさん
今回のお話は、とん太ママさん(仮名)です。デイサービスにお勤めの傍ら、訪問介護にも従事されています。二つのお仕事を通じて思うことや、ご自身のこれからについて、伺いました。
※インタビューに応じてくださった方に関する個人情報保護の観点から、お名前は仮名とし、職場に関する役職名その他委員会等の名称を実際の名称から一般的な名称に変更しています。具体的なエピソードについても、趣旨を損なわない範囲で編集をしています。
―介護のお仕事に就いた経緯をお聞かせください。看護助手に興味があったのだそうですね?
医療の仕事に興味があったんです。ただ面接を受けたところが通勤にとても不便なところで…どうしようかな、と思っていて。そんな折、叔母がヘルパーをしているんですけど、その叔母が勤める法人を勧められたのが始まりです。
いきなり電話をかけて「すみません仕事探してるんですけど」と聞いたら「介護経験は?介護ってなにか分かる?」と。「遥か昔に祖父母のをやったくらいであとは分からないんです」なんていう調子だったんですが、本当にたまたま、私の住む市の事業で、アクティブシニアの人を介護職に導こうというのがあって。50歳以上を対象に、無料で初任者研修を受けさせてくれるっていうのがあったんですよ。私は当時対象年齢には若干届いていなかったんですが、特別に受けさせてもらえることになりました。
そこで1ヶ月半勉強をして、改めて先ほどの法人の面接を受けました。面接では「何が得意ですか?」と聞かれて、PTAとかでいろんなワークショップを企画した話をしたら、デイサービスに向いているかもということで、デイサービスに配属されました。今年で4年目になりますが、1年ちょっと前から、同じ法人のヘルパーも手が足りないということで、ヘルパーステーションに週一日だけ勤めてデイとの兼務になっています。
―じゃあ、同じ法人内で兼務ということですね。
そうですね。事業所が違うので契約は二つなんですけど、法人としては一緒です。
―ちなみにデイサービスの方は週何日ですか?
今、週3です。
―合計週4日、介護の仕事をしているということですね。
そうそう、そうですね。
―初任者研修で勉強をされてからの就職でしたが、最初はどんなことを感じましたか?
ええと、みんな同じ顔に見えたというのが一番ですね(笑)うちは定員30人のところなので、まあだいたい20人から30人の方がいらっしゃるんですよ。特に当時は、女性が8割以上、という感じだったんですよね。今は男性利用者さんも増えましたけど。曜日によって男性が1,2、人という日もありました。
利用者さんの中には、覚えやすい特徴のある方っていうのはいらっしゃるんで、そういう方はお顔はすぐ覚えるんですけど、例えば、白髪でおとなしいにこやかな女性っていうと頭が白くてにこやかで…うわあ、3人ぐらい同じ人がいるみたいな感じになって(笑)
たぶんデイサービスの特徴とも言えるんですけど、曜日によって利用者さんが入れ替わるんですよね。
―そうですね。一日に二十数名と言っても、一週間通してみると、何倍もの方が。
そうなんですよ。うちも90名くらいは常時登録してるような感じになります。今はヘルパーにも入っていますし、事情があって曜日を固定してもらっているのですが、行ってない曜日がまったく分からない。その日にしか来ない人もいらっしゃいますし。たまに助っ人を頼まれて違う曜日に行ったりすると、どうしたらいいんだろうっていう感じになりますね(笑)
―4年目となっても、違う曜日になると急にアウェーになってしまいますよね。
そうですね、曜日がかぶっている方は何人かいらっしゃるんですけど、普段関りがなくて介護度が高い方がいると、どう手を出していいのか分からなくて、アウェーな感じになります。あまり介助の必要ない方たちはいいんですけど「この方、実は(歩行は)付き添いよ!」なんて先輩に言われて走っていったりとか(笑)そういうのもあります。
―なるほど(笑)ええと、勤めはじめてから、しばらくというのは先輩に付いて見てもらったんでしょうか、それとも職場内で研修みたいなものが行われたんでしょうか?
研修はなかったですね。ただ、たしか丸々2週間先輩の後ろを付いて、3週目くらいに一人立ちで、送迎の時は添乗員として一人でやってましたね。うちはドライバーさんが別にいるんですよ。
―3週目で独り立ちというと、早いほうかな、という印象ですが、そのあたり何か不安はありましたか?例えば一人立ちして添乗員として一人で乗ってくれと言われて。
もう不安だらけですね(笑)ただまあ、配慮はしてくれて、ドライバーさんもベテランさんのところに配置してくれたんです。私が「あれ、この方の家の入り口はどこだろう?」と困っていたら「3階だよ」って教えてくれたりとか。
そういう場面でフォローはけっこうしてくれましたね。私が介護について、いろいろ分からないっていうのはみんなが前提としてくれていました。うちは基本的にベテランさんばっかりで。10年選手の人たちが半分以上ですね。
―すごいですね。
そうなんですよ。パートさんたちがすごくしっかりしてるところなので、私がオロオロしてたら「なんでも聞いてちょうだい」って気遣ってくれたのがすごい助かってましたね。
―なるほど、じゃあかたちとして一人立ちはスピーディにしてしまったけれども、デイサービスであるという性格も手伝って、いつでも回りに頼ることができる環境ではあったんですね。今はどうですか?3年間がんばってきて、一通りこなせるなという感じですか?
一通り、こなせはしますけどそれでもやっぱり先輩には頼ってるなっていう部分もあります。でもちょっと私、特殊だったみたいで、何かというと絵を描くのが得意なんです。今のデイにはそういう人があまりいなかったみたいで。結局どうやったって先輩には敵わないので、得意の絵で役に立ててるところはあると思います。
私の上司にあたる社員さんは、私の20以上歳下の人なんですけど「よく見てるなあ、そういうところ気付くっていうのはすごいなあ」と思える仕事ぶりで、先輩のパートさんたちもベテランぞろいで…だけど彼女たちが、絵を描いたりすることが全然できないから、そこを私が引き受けるようになっています。
きっかけはデイサービスから家族への連絡帳で。職員からのコメント欄に私が絵を描き始めちゃったんです。はじめは簡単に花の絵をちょこっと描いたりしていたんですが、若干エスカレートして、リクエストも受けるようになって…ただ、帰りまでのわずかな時間で描かなくちゃいけないので、最初は「そういうことはしなくていいから」みたいな声もあったんですね。だけど、利用者さんたちが「こういうのがあると気持ちがほっとする」って言ってくださったんですよ。だから「描いて描いて」ってリクエストが増えていって、そうすると職員の中でも「どんどん描いちゃえば?」みたいなことを言ってくれる人が現れたりして、そのうちご家族からもコメントをいただくようになったんです。「絵を描いてくださって私たちもほっとします」とか。絵もそこまで一人一人時間をかけられないので、走り書きみたいにちょこちょこっと水性ペンで色を着けただけの絵なんですけど、それでもご家族が「おばあちゃん今日、こういうの描いてもらったんだね」って話題にしてくれて「ありがとう描いてくれて」ってご家族の方から送迎の時に言ってもらったりして、少しずつ先輩たちにも認めてもらえるようになりました。
そうしてるうちに、今は完全に美術スタッフ的に声が掛かるようになって、今日も一生懸命なんか、温泉の絵を描いてくれとかってぐわーって工作を(笑)みんながおやつの時間とかでフロアが落ち着いている時に、私一人ぱーって作業室のほうに引っ込んで、ザカザカザカってすごい勢いで工作をして(笑)、向こうが忙しいなって思ったらパパーって戻るとかそういう風な感じでちょっと私だけ特殊な動きをしているんですよね。
―(笑)いわゆるシフトの中の一般的な役割分担からちょっと外れて。
そうですね。まず、みんなもうポスターを自分たちで描くのは嫌みたいなので、私が引き受ける流れに…あまりにもフロアがワサワサしている時はさすがに私もできないんですけど、様子見ながら今できそうだなと思って視線を送りながらこう、はさみでチョキチョキチョキチョキやったりすると、もうそれはそれ自体がみんなにとって当たり前の光景になって。こうやって介護の仕事場で認められることもあるんだなって思いました(笑)
―ちょっと特殊な(笑)ともすると「そんなことばかりして」って、例えば普段のお仕事がおざなりになっていたりとか、いい加減だったりするとなかなかそこは認めてもらえなさそうですが、きっとそこも上手にされてるのでしょうね。お仕事の中では普通に、例えばトイレの介助であるとか、食事、お風呂なんかも一通りやってらっしゃるんですよね?
もちろんそういうのもやってますね。基本的には役割分担ていうのが朝、「お風呂」だったり「体操」だったりっていう当番が振られてるんですよ。多分に漏れずウチのデイも人手が足りてるわけではないので、ご利用者様にも迷惑が掛からないように、そこはきっちりとやるようにはしてますね。
―もう少し、デイサービスの様子をうかがっていきたいのですが、何人くらいの方々で、日中働いていらっしゃるのでしょうか?介護職の方だけで。
8人くらいですかね。
―8人くらいで、お風呂に回ったり、レクリエーションを先導したり。
そうです。
―生活相談員さんは専任でいらっしゃるのでしょうか?
兼任かな。基本的にはパートの人たちが常に5人くらいいて、いわゆる社員の方々がそれにプラスして合わせて8人くらいなんですけど。相談員の方は基本的にいわゆるカウンターの中で、書類づくりとかサ担行ったりとかっていうのをやってて、パートのほうがあっぷあっぷするタイミングにはフォローに入ってくれますね。
―朝は何時くらいからお仕事開始ですか?
ええと、朝は二つに分かれていて早番が8時半からで、遅番が9時からの30分ずらしで、終わりも17時と17時半までですね。朝お迎えに行く人たちは帰りは送りはしないです。
―なるほど、それで、中で体操だとか、お風呂だとかっていう役割っていうのは当日朝発表されるような感じなのでしょうか。
だいたいはシフト表に書いてあります。番号が振ってあるので、その番号を見れば今日は私がレク担当だなとか。
―ちなみにとん太ママさんが、好きなシフトはありますか?あるいは苦手なものでも。
好きなシフト、ええと、そうですね、私、機械浴が好きなんですよ。リフト浴っていうんですかね。機械浴が好きなので。
あとはそんなに嫌いなものは…まあ風呂掃除が嫌いかな(笑)大浴場が4、5人入ると一杯になってしまうんですけど、そこの掃除とかがけっこう大変です。レクリエーションはみんなと一緒にキャッキャ騒いじゃうほうだし…体操は体操で自分のなかで、はじめはどうしても苦手意識があったんですけど、最近は自分のなかで体操をパターン化させてみたので、それを自分の担当の時にはそれをやるっていうふうにいたらわりと気が楽になって。
―体操は職員が何をするのかも含めて考えなければならない?
そうですね。以前は理学療法士さんがいたんですけど、退職してしまって。今はその理学療法士さんが残しておいてくれた体操のプログラムを介護職員がそれぞれアレンジをしながらやっています。20から30分くらいやってますね。みんな歌をうたいながらリズムに合わせて体操したりとかっていうのをけっこうがんばってやってくれたり。
―なるほど。少し話が戻りまして機械浴がお好きということなんですけど、なぜなのでしょうか?
ええと、機械浴は自分のリズムでできるんですよ。デイサービスなので、機械浴の人はそんなに多くないんですよね。せいぜい3人とか多くて4人で、それに対して歩行浴とかは十数名で。ウチの場合、歩行浴の方は午前中、機械浴の方は午後からという体制になっています、午前中に十数名の方、多いときは18名の入浴を介助することもあって、そういうときは流れ作業になってしまって、一人ひとりにじっくりとは関われなくて。
もちろん急かすわけにはいかないですし。高齢者の方って、急かそうとするとかえって体が萎縮しちゃうんですよね。力が入っちゃって。そうするとご自身のペースに任せてやるのが私たちにとっても一番楽だと思います。服を脱ぐところからお風呂を終えて服を着るところまで1時間かかる方もいらっしゃるんですけどね(笑)そうするとその場所が固定されちゃうので他の椅子のところをグルグル回さないといけなくて。でも、できるだけ自分でやってもらいたいからっていう思いもあるので…そういう風にしていると、午後まで行ってしまうとレクとか午後の予定もあっぷあっぷになっちゃうので、午後はじゃあその分機械浴のほうに回しましょう、で、機械浴を2名とか3名いれるんですね。その時が利用者さんとナースと私の3人だけで、自分のペースで30から40分くらいかけて、できるので、そうすると思う存分自分のペースでできるというか。
―利用者さんとじっくり関わることができる。
そうですね。ご利用者さんのなかにも機械浴で私といると「おしゃべりがのんびりできるからいいわ」って言ってくださる方もいるので、そういうところも嬉しいです。まあ、人にもよるみたいなのですが、機械浴でもけチャッチャと動いてしまう方もいるようで、私はわりとのんびりというか、持ち時間をいっぱい使って、っていうタイプなんです。
これには理由があって…私のヘルパー経験もたぶんそこにあるんですけど、私たちのペースで効率良く動かしていたときに、そのリズムでヘルパーに入ったときに早いって起こられたんですよ。デイだと動きが早いっていうのはわりと重要なポイントじゃないですか。次がつまっちゃうし。いかに無理せず手早くとかっていうのがあるけれど、そこで「そんなんじゃダメだよとん太ママちゃん!」みたいな感じで怒られて。
―利用者さんから?
そうですそうです。ヘルパーの人たちがデイに異動すると逆に追いつかないらしいんですよ動きが。だけどデイって、特養ほどではないけれど一通りの事を全部やるので、ヘルパーに異動になっても、いわゆる介助的なことっていうのはできるので、ありがたがられてはいたんですけど、ついデイのリズムで入浴とかするときにも「はい、じゃあこれ!」ってやると「早い!」って怒られて。「え?早いですか?」って言ったら「あのね、僕は物じゃないんだからね」とか言われて。
―それはドキッとしますね。
ドキッとしました。その方は介護度が高かったんですけど、自分のペースをすごく守りたいっていう性質もあって、ちょっとこれは気を付けなきゃいけないなって。それ以来自分のスピードっていうのはデイサービスでも意識するようにはなりましたね。
―ヘルパーのお話が出ましたけれども、どういった経緯でヘルパーにお声がかかったのでしょうか?また、頼まれたときにどんなことを感じましたか?
ヘルパーは正直まったくやる気がなかったです。ただ、私の今後の生活のことや、今勉強しているアロマを将来活かすことを考えて、じゃあここは腹くくって引き受けて見ようかなと。それが去年の春でした。
―実際に入ってみて、また全然違う環境だと思うんですけれども、そのあたりデイの経験は活きましたか?早いと起こられてしまったことはあったとのことでしたが…
かなり活かせたと思います。一番最初はお風呂掃除とかそういう生活援助がメインで。そういう訪問先でのコミュニケーションの取り方にしても、デイに来ている要支援の方に近いんだなって感じました。そうなるとデイでのコミュニケーションの能力っていうのが発揮できましたし…あとは、介護度の高い方の移乗とかですね。車イスの移乗とかって、やっぱり初任者研修のときにいくらやっても現場でやるのと全然違うんですよね。それがデイである程度鍛えられたので、そういう意味では役に立ってはいました。
とはいえデイサービスのフロアっていうのは整った環境なので、スタンスも広くとれて、荷物とかもパパパッと自分の思うようにどかすことができて。個人の住宅だと、思わぬところにタンスがあったりして、そこのなかでやんなくちゃいけないっていうのは、勉強にはなりましたね。今までだったらPTさんとかが、いろいろと判断して「この方にはこういう移乗の仕方で」っていうのに従っていたのを、自分である程度考えなくちゃいけなかったんで、本当に日々勉強でした。
―なるほど…すごく興味深いです。他には違いを感じたことはありますか?
家族の方としゃべる機会が多いことですね。私、担当してるご利用者の家族に信頼をいただけたようで、ケアマネさんから「あのヘルパーさんの言うことじゃないと聞かないみたいだから、あのヘルパーさんに言ってもらってくれる?」とかって頼まれたりもしました(笑)
―デイサービスでも絵をきっかけにして家族から信頼を得たり…初対面から関係をどんどん濃くしていくのは、もともとお得意なんでしょうか?
うーん、どうなんでしょうね。
―それまでのお仕事とかご経験のなかでそのようなことってありましたか?
もともと初対面での緊張は多少あるんですけど、そこを越えるとわりとフランクになってしまうっていのうが、良くも悪くもあって(笑)、実家が工場をやっていたので、そこの工場に出入りしている職人さんとかご近所さんたちとのお付き合いが、介護に活きている気がしますね。ちょうど年齢もかぶるんですよ。ご家族にしても利用者さんにしても。実家の手伝いをしたときにあって、ああなんか似てるなあと(笑)
―いろんなことが活きてきますね。
そうですね。
―ちょっとまた話が戻って、そんなふうにしていろんなご経験を積んで、一人前に働いていらっしゃると思うんですけど、いっぽうで先輩にまだまだ頼ってしまう部分があるというお話がありました。例えばどんなことがありますか?
ええと、そうですね、うちはもう本当にベテランさんなんですよね。なので、たとえば私が「この利用者さんのケアって、このままでいいのかな?」って迷ったりしたときに先輩たちに尋ねると、答えがちゃんと返ってくるので、そういう意味ではすごく頼りにしますね。私の疑問や意見もちゃんと聞いてくれますし、先輩が分からないことでも一緒に考えてくれるので、頼れる先輩たちだなと思っています。
―なるほど。ともすると前に言われた方法で漫然とやっていて、そういうふうに質問をしてくれる後輩っていうのは先輩にとっても嬉しいんじゃないかと思います。そういった質問する姿勢について、誉められたことはありますか?
いやー、どうなんだろう?あえてそこにたいして誉めるとかっていう話はしないけれど、私がぶつけた疑問について、突き返さずに「じゃあちょっと考えてみようか」って話を持っていってもらえるので、そういうふうな言葉が出たっていうことだけでも嬉しいですね。
―そうですね。跳ね返されちゃったりすると、なかなか質問のしがいもなくなってしまいます。そういったベテランさんのお話と合わせて、先ほど登場した年下の上司の方も、優秀な方なのでしょうか?
だと思いますね。以前はその方も一緒にフロアに立ってたらしいんですけど、私の入った頃には相談員の仕事がメインになっていました。相談員の仕事をしているカウンターからフロアを見ると私たちの目が行き届いていないところが俯瞰して見えるようで「○○さんが立ってるよ」って気づくのも早いですし…あの年であれだけ頑張れるのはすごいなって思いますね。
―頼りになる先輩や社員の方々がたくさんいらっしゃいますね。
そうですね。それから、うちのデイサービスですごくいいなって思うのが、事故があったときに、誰かを責めようっていう考えがないんですよ。報告はきっちりしてくださいというだけで。だからインシデントもすごくお互いに出しあったりしているんですけど、そういうときに人を責めたりとか「あいつできないから」っていうことを誰も絶対言わないんですよね。
私も利用者さんを目の前で転ばせちゃったことがあって、それはすごくショックだったんですけど、そういうことがあったとしても絶対誰も叱らないし、気を付けるポイントとおさえつつ、こういうのは難しいよねっていうふうなフォローもしてくれて…そうすると返って自分も反省をして。みんなで、どういう介助をしたらより安全か、声かけをこういうふうに変えようかっていう話をしてくれますし、そういう文化ができているっていうのは、先輩たちがちゃんと見てくれているからかなって気がするんですよね。
―いい職場ですね。管理者さんがいい職場なんでしょうか?
そうですね、管理者さんもいいですし、パートさんたちがお互いにそういう空気感があるというか。他で勤めている介護職の友達とかと聞いていても、パートさんたちがしっかりしていて、それを管理者さんがうまく受け入れてくれるようなマッチングしているところはすごくうまく回ってるんですけど、そうでなかったりするとパートさんたちがエゴが強かったり悪口があったり。社員の方って転勤とかで入れ替わるんですけど、パートさんは辞めない限りそのままなので。そうすると15年とか17年の方がうちにもいるので、
―同じデイサービスで?
そうですそうです。
―すごい!
すごいでしょ!そういうベテランの方たちがキツかったり仕事ができなかったり、人を責めてばかりだったら、ギスギスした感じになると思うんですよね。私の知らないところで辞めていってる人たちもいるので、そういう方たちの関係っていうのは分からないんですけど、私の見た範囲ではすごく恵まれた職場だなって思います。
―では、いまのところ、辞めようっていうような気持ちは全然ない?先ほどアロマの勉強を活かしたいとのお話もありましたが…
はい。デイの仕事が楽しいので、アロマを使った仕事を始めても、週1日か2日でも、続けたいなとは思っています。それはたとえば今の事業所がいろいろと改革があって私の求めていたのと違うなってなったら他の事業所のデイサービスにいくかもしれないんですけど、介護の仕事もアロマも両方を続けてっていうのが私の思い描いているところで。
―これからすごく楽しみですし、そうやって今の仕事を腰掛けのように捉えずに働くことができているっていうのはすごく素敵なことですね。
そうですね。ただ楽しさだけじゃなくて、介護職員一本で働くとしても、お給料を考えたときには、施設で夜勤を月に4,5日入るような働き方でないと伸びていかないでしょうし、私の年齢からそれをしてしまうと体を壊すような気がして…なので介護をメインに仕事を置くというのが厳しいかなというのも正直なところです。
―そういった現実的な部分ももちろん考えて介護とちゃんと付き合っていくというか。
これからのことをもう少し聞いてまとめにさせていただきます。これから介護の仕事を続けていくにあたって、チャレンジしたいことや、できるようになりたいことなどありますか?
今の状態がよろしくないと言えば、満足しちゃってる部分もあるのが一番…楽しいですからね。
私は今アロマの勉強をしていて、アロマの知識や技術を持った人が介護施設にボランティアに行ったりするんですけど、そういう人たちは介護の現場を知らない人が多いんですよね。中でどういう風に人が動いてるかまではわからない。
私がもともと初任者研修を主宰していた特養の人たちと個人面談があったときにいろいろ話してたんですけど…家族や、介護を受ける本人が悩んでいて、でもその悩みのやり場が分からずに、すごく不安になっている方が多いんだなっていうのがなんとなく見えてきて。
私と同世代の友人だと、家族の介護をしている方とそうでない方と、介護に対する捉え方が全く違うんですよね。そういう方々に「いや、介護はそこまで肩ひじ張らなくていいんだよ」とか、逆に「ああ、そこまで頑張ってたんだね」っていう話を聞いてあげたりするのにアロマが一つ役立つんじゃないかなっていう思いがあって。そうやってアロマを介して話を聞くときに、私が介護の現場から離れてしまっていたら、どんどん現場感覚が薄れてしまって、ちゃんと受け止められないんじゃないか、そんなんで介護とアロマを一緒に語っていいのかなって不安があったりするんですよ。
現場が一番楽しいっていう気持ちはあるんですけど、現場での経験をもっと別の方向でも活かせるようなやり方を上手く見つけたいなというのがあります。
さっき、ヘルパー先で頼られたっていう話をしましたけど、その時の家族さんに私、デイで学んだことを活かして、ご家族に介助方法の簡単なアドバイスをしていたんですよ。この時にはこういう倒し方をして足のあげ方をすると腰に負担がかかりませんよって。そうしたら、初めて今までのヘルパーさん教えてくれなかったって言われたんです。そういうところで信頼を勝ち得たところもあると思うので、介護職員としてももっと成長していきたいですね。
―職場の頼れる先輩方のように!夢のあるお話をありがとうございました!
今回のインタビューはここまでです。介護のお仕事を楽しんでいらっしゃる様子が声のトーンからも伝わってきて、こちらも楽しい気持ちになる一方で、ご自身の生活を営むための「介護の仕事」を冷静に見つめる視点もあり…勉強になるお時間をありがとうございました。